MSRのガソリンストーブにおいて、燃料に灯油を使用する際にプレヒートにアルコール燃料を使用すると予熱不足で、火柱が上がってしまってしんどい。これをなんとかしたい。

この記事は「MSRウィスパーライトインターナショナルを灯油で運用する」の後編になります。
プレヒートの火持ちを良くしたい
MSR「ウィスパーライトインターナショナル」のプレヒート(予熱)にアルコール燃料を使うと、プライミングカップになみなみに注いだアルコール燃料が沸騰して急激に気化し、短時間で燃焼し切ってしまう様子が観察できます。
この燃焼速度をおさえることにより、もう少し効率よくプレヒートを行いたい。
プレヒート燃料の火持ちを良くするための方法として、SVEA 123Rにカーボンフェルトのウィックを導入で実績があるので、今回も同じ作戦でいきます。
プライミングカップのウィックを交換する
今回もこちらのカーボンフェルトを使いました。
まずはプライミングカップとウィックを外します。

オリジナルのウィック(右)はガラス繊維か何かでできていて、数回の使用でこのように焦げてしまってました。すぐにボロボロになってどこかにいきそう。おそらく、ガソリンや灯油をプレヒートに使用する分にはこれで十分なのだと思いますが、アルコール燃料で使用する場合はちょっと役不足。
今回は、このウィックを交換します。
で、プライミングカップのサイズに合わせて、カーボンフェルトを切り出します。

今回はだいたいサイズを合わせて、正方形に切り出して、4つの角を切り落として八角形にし、真ん中に十字の切れ込みを入れました。
もちろん、円形に切り出して、真ん中にも丸く穴を開けても良いです。
プライミングカップを上に被せるとちょっと大きいくらい。

カップの中に押し込むので、多少大きくても問題ないでしょ、という雑な心境です。なお、当方、A型です。
で、プライミングカップにカーボンフェルトを押し込んだ姿がこんな感じ。けっこう溢れてますけど、使ってるうちにカーボンフェルトが縮んでくるので、こんなので大丈夫です。

プライミングカップをセットします。

プレヒートしてみる
さっそくプレヒートしてみます。
カーボンフェルトにたっぷりとアルコール燃料を染み込ませて、

着火。
ちょっと分かりづらいけど、青い炎が点いています。

周囲を暗くするとこんな感じ。

「ウィスパーライトインターナショナル」の設計が良いのだと思いますが、ジェネレーターチューブに沿うように炎が流れて、フレームリフレクターの穴を通過し、効率よくジェネレーターを暖めているように見えます。
プレヒートの炎が本当にもう消えかけになったところで、コントロールバルブをひねり、燃料ボトルの灯油をストーブに流し込みます。
そうすると、赤い炎が立ち登り、「また失敗か?」とは思うのですが、

3〜10秒程度で、赤火が収まり、本燃焼に入ります。

うまく本燃焼に移行できた場合、バーナーヘッドへの煤の付着は無し。

フレームリフレクターの裏にも煤は付いてませんでした。

アルコール燃料によるプレヒート、サイコーです。
成功率を上げるコツ
10回くらい試して、8回ほどはうまく本燃焼に移れたので、成功率は8割くらい。ただし、いずれも屋内でのテストなので、屋外で風があるときなどは、もう少し難しいと思います(屋内でのガソリンストーブの使用は自己責任です)。
失敗するときは、やはりプレヒート不足。10秒以上経っても、本燃焼に移行せず、燃料を絞ってジェネレーターを暖めて、再度燃料を入れて赤火が出て、の繰り返しになり、最終的に本燃焼に移行できたとしても、バーナーヘッドが真っ黒(↓)の煤まみれとなってしまいます。これは失敗。

コツその1:プレヒートの炎が消えてから着火する
本燃焼への移行を成功させるコツは、とにかく、プレヒート時間をしっかり取ること。プレヒートの炎が小さくなってきたからと言って、慌ててコントロールバルブを開放し、灯油を送り込まないことです。
プレヒートの炎が消えてしまうくらいまでしっかり時間を取って予熱します。その状態で、コントロールバルブを開くと、シューッと白い気化した灯油が出るだけで、炎が点かないと思うので、慌てずに灯油の湯気にライター等で着火すると、ちゃんと炎が点きます。このくらい遅いタイミングで着火して、失敗したことはなかった気がします。
まぁ、なんとなくプレヒートの炎で着火する方がスマートでカッコいいですけどね。プレヒートの炎がほとんど消えかけのタイミングでコントロールバルブを開き、本燃焼に移行できることもあるので、スマートな着火ができないこともないと思いますが、確実に着火したければ、プレヒートの炎が消えてから、再度ライターで着火するのが良いと思います。
コツその2:アルコール燃料をケチらない
もうひとつのコツは、プレヒートに使うアルコール燃料をケチらないということです。アルコール燃料をカーボンフェルトにタプタプに染み込ませます。
ただ、アルコール燃料が完全に飽和すると、着火時に溢れてしまうことがあります。当然、溢れたアルコール燃料も燃焼して、けっこう焦りました。

耐熱性の高いテーブル上で使用するのが良いと思います。
まとめ
結局のところ、アルコール燃料では(1回のプレヒートでは)灯油が気化するギリギリのところまでしか予熱できないというところが問題なので、例えば2回プレヒートするなどすれば、もっとカンタンに本燃焼に入れるのかもしれません。
が、1回のプレヒートで仕留めようとするのであれば、(今のところ)火柱が上がってしまうのは避けられなさそう。
なので、このまま待っていれば本燃焼に移行するのか、待てど暮らせど本燃焼には移行せず、ただただ煤が付着するだけなのかを見極めるのが肝心だと思います。
改めて火柱が上がっている画像を見比べてみると、左が「液体の燃料が燃焼しているNGパターン」で、右が「数秒後に本燃焼に入るOKパターン」。若干、炎の雰囲気が違うことに気づきました。


- NGパターンの炎は赤く、メラメラと燃えていて、勢いがない
- OKパタンの炎はNGパターンより明るく、バーナーヘッドから筋になって炎が出ている
というような違いがありそうです。これを見極められれば…。
とは言え、明るい屋外で炎の違いを見極められるとも思えず、また、火柱が上がっている中、なかなか冷静にはなれないことを考えると、単純に「10数秒まって本燃焼に移行しなければ、もう一度プレヒートからやり直す」くらいの心の余裕が、いちばん必要なのかもしれません。
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