昨年、日帰り用のバックパックをBlack Diamond「パーシュート30」に更新したのですが。
その前に背負っていたGREGORY「Z40」のような「トラディショナルなバックパック」から、「イマドキのトレランに系譜を持つテクいバックパック」に乗り換えた衝撃はなかなかで、そうすると今度は、やはりイマドキである「U.L.(ウルトラライト)系のバックパック」に興味が出てきます。
テント泊用に75リットルのバックパックも持っているのですが、無雪期・1泊程度のテント泊には、容量的には完全にオーバースペック。
U.L.系なら皆さんもっと小さなバックパックでテント泊してるんでしょう?
ということで、軽量なテント泊への憧れもふくらみつつ、Trail Bumの「STEADY SPECTRA」を導入してみました。
Trail Bum「STEADY SPECTRA」
ウルトラヘヴィなウルトラライト
今でこそ大手メーカーも参入してきているU.L.バックパック。
数年前まではガレージブランドのプロダクトであり、高級(で軽量)な素材による少数生産と、その希少性により、まあまあお高いものが多く、Hyperlite Mountain Gear、Zpacksあたりだと6万円以上。
軽量テント「X-Mid 1 Solid」で注目しているDurston GearもU.L.バックパックを出していて、「Kakwa 40」なら39,800円(+送料+関税)。
国内のU.L.ブランド山と道でも「ONE」が49,000円から、「THREE」が35,000円、「MINI」が32,000円から、という感じ。
DCFに軽量ポリエステル繊維などをラミネートしたDCH(ダイニーマ・コンポジット・ハイブリッド)素材を使用 / 40L / 29.9oz(848グラム) / 349米ドル
さいきん流行りの新素材「Ultra Fabric」Ultra 100Xを採用 / 40L / 20.0oz(566グラム) / 399米ドル
いやーU.L.系めっちゃ興味あるけど、お値段がぜんぜんU.L.じゃねえんだよなー。U.H.(ウルトラヘヴィ)なんだよなー。
あと、「Ultra Fabric」気になるよなー。「Kakwa 40」も「Ultra Fabric 200」なんだよなー。
Trail Bum「STEADY」シリーズ
と、U.L.の大海で溺れかけていたワタクシに手を差し伸べてくれたのがTrail Bumでした。
Trail Bumのバックパックは、40〜50Lの「STEADY」シリーズが2万円台前半で、30Lの「BUMMER」シリーズなら2万円切り、13〜19Lの「BIG TURTLE」シリーズは1万円ちょっととお値打ち価格。
「BIG TURTLE」だとテント泊は厳しそう、「BUMMER」だと「パーシュート30」とサイズが被ってしまう、という理由で今回は「STEADY」シリーズの「STEADY SPECTRA」を選択。
耐摩耗・耐衝撃性に優れる、超高分子量ポリエチレン繊維「スペクトラ」をリップストップにしたナイロン素材を使用 / 485グラム / 23,100円
本体はナイロン素材 / 485グラム / 22,000円
「SPECTRA」を選んだ理由は、「同じ重量なら丈夫な方が素晴らしい」という、たったいま思いついた格言に従ったためです。
「STEADY SPECTRA」の特徴
というアレで、去年購入して何度か背負ってきたTrail Bum「STEADY SPECTRA」を遅ればせながらレビューしてみたい。
「ザ・U.L.バックパック」なデザイン
シンプルな1気室で、ロールトップの開口部。大きなメッシュのフロントポケットと、サイドポケット。
「U.L.バックパック」と聞いて頭に思い浮かぶ、すべての特徴を持っていると言ってイイ。そういう意味では「トラディショナルなU.L.バックパック」と言うべきか、「オーセンティックなU.L.バックパック」と言うべきか。
長めのロールトップ
ロールトップは、キンチャクのように絞ってからクルクルと巻き、1本のストラップで止めるタイプ。
吹き流し部分が約29cmと長いため、過積載が可能です。
こちら(↓)はロールできないくらい荷物でパンパンの「STEADY SPECTRA」。さすがに過積載すぎる。
ストラップが長いので、クローズドセルのスリーピングマットをバックパックの上部に固定することも可能だと思います。Y字のストラップならもっと良かった。
大きなメッシュのフロントポケット
U.L.バックパックをU.L.バックパックたらしめている、大きなメッシュのフロントポケット。
メッシュはあまり伸縮しないタイプなので、経年使用で伸びる心配が少なそう。ポケットにはマチが付いていて、十分な収納力があります。飾りじゃない。
開口部には簡易的だけど効果的なゴムの「絞り」がついていて、これにより開口部にある程度のテンションをかけ、内容物を落としづらくすることができます。
フロントポケットは雑にモノを突っ込めて本当に便利なのですが、小物がガチャガチャ入っていると見た目がヒジョーによろしくないということが判明しています。
水抜き穴のあるメッシュのサイドポケット
サイドポケットも大きめのメッシュになっていて、開口部はフロントポケットと同様の仕立て。
容量はたっぷりで、850mlのRivers「ループエア」と500mlのHydraPak「RECON」の両方が、ひとつのポケットに同時に入ります。
バックパックを担いだままでもサイドポケットのボトルが取り出しやすくなるように、開口部が前に向かって低くなるよう斜めにしつらえてあります。
サイドポケットの底面はメッシュ素材ではなく、本体と同じ丈夫な素材に切り替えてあるのですが、ヒジョーに芸が細かいことに「水抜き穴」がついています。
「STEADY」は、全体的に「とにかくシンプルで、簡易的に済ませられるところは簡易的に」というような精神が感じられるんだけど、サイドポケットには水抜き穴。たぶん、制作者の譲れない、こだわりポイントなんだと思います。雨に降られて、水が抜けなくて困った経験があるのかな? と想像してしまいます。
幅広のショルダーストラップ
ショルダーストラップは幅広で、厚みも十分。
ショルダーストラップの上に配置されているテープがMOLLE規格になっていたら、もっと幅広いショルダーポケットが装着できたんじゃないか、とも思いますが、あまり見ない幅広のテープになっています。
なお、通常、ショルダーストラップの肩側の付け根部分に付いているロードリフトストラップは省かれてました。
ショルダーストラップには、伸縮性がある、ホイッスル付きのチェストストラップも付いています。U.L.バックパックにしては、ちょっとゴツい印象ですが、伸縮素材の使用など、よく考えられていると思います。
なお、ホイッスルの吹き口は下向きです。おそらく、埃が入らないようにという配慮によるものだと思います(が、以前使っていたOSPREYは上向きでした)。
裏面が3Dメッシュのウェストハーネス
「STEADY」より1サイズ小さい「BUMMER」シリーズでは省かれているウェストハーネス。「STEADY」シリーズにはついています。40Lサイズであってもウェストハーネスが欲しいワタクシにピッタリ。
ポケットなどはありませんが、U.L.バックパックにしてはしっかりした造り。
裏面は3Dメッシュになっていて、汗を逃がす効果があるようです。
外せる背面パッド
「STEADY SPECTRA」はフレームレスなのですが、背面パッドが入っていて、これによりギリギリ形を保つことができています。
背面パッドの重さは50グラム。これを抜いて50グラム軽量化することもできます。たった50グラムですが、485グラムのうちの50グラムなので、10%以上の軽量化になります。
ただ、背面パッドを抜くと背負心地も悪くなると思われるため、いまのところ抜かずに使用しています。内側に丸めたスリーピングマットを沿わせる場合は不要かもしれません。
拡張可能なループ
フロントポケットの端に、左右3箇所ずつの6箇所、背面パネル側に左右2箇所ずつの4箇所、合計10箇所に、バンジーコードなどを通せるループが設置されています。
「STEADY SPECTRA」の良いところ
Ultra Light (U.L. / ウルトラ・ライト)
「U.L.バックパック」なのだから当たり前なのですが、しかし当たり前に軽い。
スペックでは40〜50Lの容量で、485グラム。いま流行りのトラディショナルなバックパックを知らないのだけど、例えばGREGORYの「ズール45」で、1.56kg。OSPREYの「タロンプロ40」で1.44kg。
荷物を1グラムも軽量化しなくても、バックパックを「STEADY」シリーズに換えるだけで、1キログラムも軽量化できるわけです。もっとも手を付けやすい軽量化の手段だと言えます。
だからと言って、荷物を無制限に重くして良いという話ではない。「STEADY」に換えてパックウェイトが12.9kgというのは、U.L.でもないし、いろいろ甘えすぎ。反省しろ。
素晴らしい背負心地
バックパック界のロールス・ロイスとは言いませんが、U.L.バックパックにしてはとんでもなく背負心地が良い。
おそらくは、幅広のショルダーストラップとその上の幅広のテープが、荷重を分散し、背負心地の良さに貢献しているとは思いますが、ほかにも要因はあるんだろうか。
そういえば、ロードリフターがないわりに、バックパックの重さが肩甲骨の上に乗っている感覚もあります。
ショルダーストラップの柔らかさもちょうど良いのかもしれない。以前の「STEADY」はショルダーストラップが固かったそうですが、現在のものは絶妙にコシのある柔らかさで、肩へのダメージが少ない気がします。
ただし、13kg弱の重量を背負ったときは、ワタクシの軟弱な肩には食い込みました。これはライトウェイトじゃない荷物が悪いのであって、「STEADY SPECTRA」が悪いわけではないです。
「STEADY SPECTRA」のイマイチなところ
背面パネルがとんでもなく汗ビショになる
「STEADY」は、そして多くのU.L.バックパックは、背面パネルの通気性を良くしたり、汗を逃がしたりするような機構は備わってないので、背中の汗がダイレクトにバックパックに伝わります。
汗ビショ世界ランカーともなれば、このとおり。
完全に染みてるし、背面パネルの表面に汗が滴ってます。
こういうものだと諦めて、汗が染みても中の荷物を濡らさないようにするか、あるいは背中の通気性を良くするようなパーツを取り付けるのか。
皆さん、どうしてるんでしょうか。こんなに汗をかかない?
ハイドレーションスリーブがない
「STEADY」は、というか、U.L.バックパック全般がそうだと思いますが、ヒジョーにシンプルな1気室であり、メインコンパートメントの中にはなんにもありません。当然、ハイドレーションスリーブ(プラティパスのようなソフトボトルを収納しておくバッグ)なんてあるわけがない。
現在はハイドレーションシステムはまったく使ってないのですが、満水のプラティパスを入れておく場所として、ハイドレーションスリーブを使ってるんですよ。
もともとハイドレーションシステムを入れておく場所なので、プラティパスを入れておくにはちょうど良く、重宝しているのですが、「STEADY」の場合はそのような場所がいっさいありません。仕方なく背面パネル側にプラティパスを立てるようにしてパッキングしています。
が、もしかしたら、背中側にそこまでこだわらず、バックパックの一番上に乗せれば良いのかも。
鍵や小銭をいれるポケットがない
これも「STEADY」に限らず、「U.L.バックパックあるある」なのかもしれませんが、これまでのバックパックにフツーに付いてた「ファスナー付きのちょっとしたポケット」がない。中に鍵をぶら下げて置けるようなフックもない。
初めて「STEADY」を使ったとき、登山口に付いてから鍵をどこに入れようか、ヒジョーに悩みました。
現在は、鍵や小銭なんかをいれる小さなオーガナイザを導入し、バッグインバッグで解決しています。
U.L.界隈は、不自由を感じたら自分でポケットをDIYするなどする文化だと思うので、こういう不便さも皆さん楽しんでいるのかもしれない(あるいは、最初から不便だと感じてないのかも)。
まとめ:「ザ・U.L.バックパック」
「背面パネルが汗ビショになる」「収納がない」というU.L.バックパックそのものを否定するようなデメリットしか思いつかない、ヒジョーに優れたU.L.バックパック「STEADY SPECTRA」。
ここまであまり触れてきませんでしたが、バックパックとしてのデザインもとてもステキで、まさに機能美といった感じ。
カジュアルなデザインは街中でも使いやすく、「STEADY SPECTRA」で2泊の出張に行ったこともあります。お前、こんな格好で出張してるのかよ。
コスパもとても良く、U.L.バックパックのエントリーモデルとして、完璧なバックパックを選んだと自負しております。
ちょっと困ってるのは、せっかくのU.L.バックパックを選んでおきながら、荷物が重すぎて、U.L.の恩恵をまだあまり受けられていないところです。パックウェイト12.9kgはさすがにやり過ぎだと思うので、ベースウェイトを5〜6kg(パックウェイトが7〜8kgくらい?)に絞るというのを今後の目標のひとつにしてみたい。
もうひとつ。日帰りでもU.L.スタイルを楽しみたくなってしまっている自分がいます。「STEADY」の40〜50Lで日帰り装備だと、スカスカでオーバースペック。もうひとつサイズを落としたU.L.バックパックはどうなのかなーという興味も湧いてきて、とても困っています。
どうしてくれるんですか。
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