日帰り登山において、常にワタクシの背中に在り続け、苦楽を共にしたバックパック、GREGORYの「Z40」。
GREGORYにおいてはすでにその座を「ズール」/「ジェイド」に明け渡していますが、ワタクシの「Z40」はまだまだ現役ですよ!!と咆哮したのも束の間、(おそらくは)ポリウレタンと思われるバックの内側の壁が、随分前から剥がれてきてるんでした。
なぜ、モノが擦れるバッグの内側に加水分解する素材を使うのか…。
画像ではたいしたことがないようにも見える内壁の剥がれ。白い(たぶん)ポリウレタンがポロポロと剥がれ、バック内に容れたあらゆるモノに付着し、一度使うと掃除や洗濯が大変という有様。
精神衛生上、ヒジョーに良くない。
手元の記録によると、7年前に購入したようです。たぶんロゴの切り替え時期だったと思うのですが、旧ロゴ(↓)もわりとカッコいい。
「Z40」の前に買った「スタウト」はぜんぜん加水分解してないのですが、「スタウト」は新ロゴなので、製造時期としてはZ40よりも新しいのかな。GREGORYが、ロゴ切り替えのタイミングで使用する素材を変えた可能性もあります。
とにかく、加水分解した「Z40」をなんとかしたい。ということで、日帰り用のバックパックを赤兎山の山行以降、探していたんでした。
候補になったバックパック
最近の登山用バックパックのトレンドのひとつが「トレイルランニング用のバックパックからのフィードバック」だと思います。
目立つところで言えば、例えばショルダーストラップに付いた大型のポケットでしょうか。形状も「背負う」という表現よりは「着る」という表現が似合いそうなものも出てきました。
特にショルダーストラップの大型ポケットは気になっていて、登山中もっとも頻繁に取り出すスマホを入れておく場所が欲しい。これまではPaaGo WORKSの「PATHFINDER」をチェストバッグとして身体の前にぶら下げていたのだけど、これが無くなるのならけっこう嬉しい。
というわけで、ショルダーストラップに大型のポケットがついているものという条件で見つけてきたのが以下でした。
それぞれ一長一短があるのですが、
- ファイヤークレスト:カラーもデザインもサイコーに良いのだけど、バックカントリーに向いたモデルか? バックカントリー用は別のバックパックを狙っているし、スキーはともかくスノーボードは担ぎ辛そうだし、ビミョーにマッチしない。
- ブリッジャー:好きなブランドだし、デザインもとても良いのだけど、伝統的なスタイルが今の気分じゃない。あと、「ブリッジャー35」で1.7kgはちょっと重い。最大のネックが値段。高すぎる。
- Ducan 24:クライミング系メーカーで好きなブランドだし、カラーも豊富で値段もお手頃。一点だけ気になるのがワンサイズ展開というところ。
- パーシュート30:メーカーとしての実力は疑っていないのだけど、このモデルに関してはカラーがダサい。ちょっとムリ。
正直、どれもピンと来てなかったのですが、ずいぶん悩んだ挙げ句、色がムリな以外はまったく問題なさそうなBlack Diamond「パーシュート30」を選んでみました。
Black Diamond「パーシュート30」の特徴
「パーシュート30」はトレランバックパックからアイデアを持ってきた、ファストハイク向けバックパックという理解です。Mサイズで796グラムと軽量で、一気室、雨蓋なしのシンプルな設計。
大きなポケット付きのショルダーストラップ
購入動機でもあり、「パーシュート30」の大きな特徴のひとつでもあるショルダーストラップの大型ポケット。
右のショルダーストラップには、ジッパー付きのポケットがひとつ、ストレッチポケットがひとつ。左のショルダーストラップにはストレッチポケットがふたつ、取り付けられています。つまり、ショルダーストラップには、合計4つのポケットがあります。
また、チェストストラップは細めのものが2つ配置されていて、上のストラップは伸縮しないタイプ、下のストラップは伸縮するタイプになっています。これにより、しっかりとした装着感とフィット感を実現しているものと思われます。
通気性の良いバックパネル / ヒップベルト
背面のバックパネルと、ヒップベルトは通気性のためだと思われますが、中抜き構造になっています。
「Z40」のように、背中とバックパネルが確実に離れるような構造ではないので、通気性の効果はそこそこという感じ。でもまぁ、「Z40」でもビショるときはビショる。
「パーシュート30」のショルダーストラップ、バックパネル、ヒップベルトあたりは「コンティニュアスフィット」と言って、包み込むようなフィット感を実現しています。
伸縮する大きなフロントポケット
U.L.系バックパックやトレラン向けバックパックでよく見られる、大型のフロントポケット。
メッシュタイプではないのですが、ストレッチする素材で、メイン・コンパートメント(気室)に入れ忘れたモノなんかをついつい突っ込んでしまいます。
基本的にはタイベックシートを突っ込んでいるのですが、フォールダーカップや虫除けスプレーなどを入れていることもあります。
フロントポケットと繋がるサイドポケット
「パーシュート30」の大きな特徴のひとつとも思えるのが、サイドポケットです。
サイドポケットはフロントポケットと内部で繋がっていて、フロントポケット同様にストレッチする素材なので、いろんな形状のものを柔軟に入れられそうです。
自分の場合は左側はトレッキングポールの定位置になっています。サイドポケットのお腹側にはスペースが残っているので、行動食を入れておくことができます。
右側は飲料水が入ったボトルの定位置です。右利きなので、取り出しやすい右側に入れてます。
サイドポケットは浅いため、ボトルを差し込むだけだと半分くらい頭を出してしまいます。そこで、ボトルのお尻を、サイドポケットと繋がっているフロントポケットの方に押し込むことにより、ボトル全体をサイドポケットの中にしまっています。
フロントポケットとサイドポケットが繋がってるからこそできる芸当かもしれません。
クイックプルコンプレッション
上に記載したようにサイドポケットにはトレッキングポールを差しておくことが多いのですが、このトレッキングポールを固定しているのがコンプレッションストラップです。
「パーシュート30」では「クイックプルコンプレッション」と言い、フロントポケット内にあるコードを引っ張ると、両サイドのコードが絞られるような仕組みになっています。
そこまで使いやすい仕組みではないので、おそらくはコストや目標重量的にこの仕組みに収まったのだと思います。
デイジーチェーン
デイジーチェーンがショルダーストラップに2箇所、フロントポケットの両側に2箇所、合計4箇所についています。
あまり活用できてませんが、熊鈴とか使用前のフェイスタオルをぶら下げていることが多いです。
その他
背中側に、メイン・コンパートメントとは別に、ハイドレーションポケットがあります。おそらくハイドレーションシステムのホースを通すためのものと思われるループ付き。
自分はハイドレーションシステムはいまは使っていないのですが、水のように重たいものはできるだけ背中側にパッキングしたい。そこで、水を入れたプラティパスをこのハイドレーションポケットに入れています。
U.L.系など、軽量バックパックでは付いてないことも多そうなロードリフトストラップもあります。
ロードリフトストラップは、ショルダーストラップの付け根のストラップで、荷室が後ろに引っ張られ重心が身体から離れないようにするためのものです。「パーシュート30」では、バックパックを背負って走るトレイルランニングの「荷物を身体に密着させたい」という思想が反映されて、このあたりもしっかり作り込まれているのかなと思います。
雨蓋はないのですが、トップに外からアクセスできるポケットがあります。残念ながら止水ジッパーではありません。(メイン・コンパートメントは止水ジッパー)
メイン・コンパートメントの内部背中側には、キークリップ付きのジッパーポケットがあります。鍵や財布を入れておけるなど、何気に便利。
普通のバックパックには標準装備されてる内部ポケットですが、U.L.系のバックパックでは省略されているものもあって、意外と「鍵を入れる場所がない」と思うこともあったりします。
全体的に細部まで手を抜かずに作り込まれていて、満足度の高い仕立てになっています。
「パーシュート30」の良いところ
機能的
上の特徴であげたように、バックパックとして必要な機能はほとんど揃っているし、全体的な造りも良く、満足しています。
背負心地 │ コンティニュアスフィット
背負心地はとても良くて、これはトレラン用バックパックのようなフィット感から得られるのだと思います。Black Diamondではこれを「コンティニュアスフィット」と呼んでいて、
パック本体から独立した「コンティニュアスフィット 」ショルダーベルト/ウェストベルトを採用し、身体を包み込むようにフィットします。
パーシュート30(S カーボン/モアブブラウン): ブラックダイヤモンド | ロストアローオンラインストア
と説明されています。
背負心地にこだわっているのは、サイズ展開にも表れていて、「パーシュート30」は(正規代理店のロストアローのページによれば)、S、M、Lの3サイズ展開。背面長に応じて適切なサイズが見つかると思います。
普通、このくらいのサイズ、価格帯のバックパックだと、ワンサイズか、S/MとM/Lの2サイズ展開だと思うので、Black Diamondは気合い入ってるなーという印象です。
トレラン用のバックパックっぽく、背負う位置は少し高めで、肩甲骨あたりで背負う感じになると思います。まったくトレランはやりませんが、軽くジョギングする程度ではぜんぜん荷物が揺れず、身体にフィットしている感覚があります。
また、デザインも逆洋梨型と言えば良いんでしょうか、バックパックの底に向かってテーパードな形状で、重心を高く保てるようになっています。見た目にもヒジョーにアグレッシブでカッコいいデザインだと思います。
収納力
ストレッチするフロントポケットやサイドポケットのお陰で、楽にパッキングできるし、収納力は多めに感じました。
このくらいのモノは苦もなくパッキングできます。
まぁ、ファストハイクは「持っていくモノを減らす」ところから始まると思うので、あまり収納力を気にするべきではないのかもしれません。
「パーシュート30」のイマイチなところ
ぼくのスマホが入らない
ショルダーストラップのポケットにスマホを入れたい。これが、「パーシュート30」の購入動機のひとつだったのですが、
「ぼくのスマホが入らない」
悪い冗談ですか?
なにかの隠語ですか?
いやいや、ちょっと待てと。別にこのスマホが特大ってワケじゃないし、数年前に購入した高くない方のiPhoneよ? つまりフツーの大きさのフツーのスマホですよ。おそらく最も普及しているであろうサイズのスマホが、おそらく最もスマホを入れること前提にしているポケットに入らないっていうのは、どう考えてもアタマがおかしい。たぶん、企画や設計ではなく、製品化のプロセスがおかしい。知らんけど。
一応、ムリをすれば入るのですが、「パーシュート30」を背負った状態で、歩きながらスマホを出し入れするのはムリ。ムリなんだよ。フツーにムリ。フツーじゃなくてもムリ。
この動画とか、めちゃくちゃ余裕でスマホ入れてますけどね!?
CGなの!? ねえ!? フェイク動画って言って拡散してイイ!?
で、これ、スマホケース着用状態だとムリなんですけど、ケースを外せばギリギリ何とか、背負った状態でも出し入れできるので、現在は「登山のときはスマホケースを外す」という運用でやっとります。
登山のときこそ、スマホケースが必要なんですけどね。
あと、ジッパーポケットのほかにストレッチポケットが3つあるのですが、これもイマイチ何に使ったら良いか分からないサイズ感。例えば、期待値としては500mlのペットボトルが入ると、ボトルケースが不要になって嬉しかったりするのですが、まぁ、入らない(押し込めば入るけど、ストラップの肩への当たりが悪くなる)。
一体何のためのポケットなのか。
なお、自分の「パーシュート30」はSサイズなので、ほかのサイズならもしかしたらポケットも大きくなり、スマホも余裕で入るのかもしれません。もしそうだとしても、スマホのサイズは体型で変わらんからね? どのサイズのバックパックでも、ポケットの大きさは同じにするべきやからね?
カラーがダサい
冒頭でもお伝えしましたが、カラーがムリ。
イマドキ、バックパックも性能や機能だけではなく、カラーも大事なファクターなので、もうちょっと何とかならなかったのか、という気持ちにはなります。購入した「カーボン/モアブブラウン」に関しては、差し色の「モアブブラウン」を他の色にするだけで、だいぶ印象が違ったのでは?という気もします。もうひとつの「オクタン/インクブルー」については、ちょっとコメントできない。
一方で、レディースの「ウィメンズ パーシュート30」の「チェリーウッド/インクブルー」はなかなかどうしてステキな色だと思うので、Black Diamondのデザイナ部門がトチ狂ってるわけではなさそう。
まぁ、色や(機能に関係のない)デザインに関しては、好みの問題だと思うので、そこまで嫌がる必要はないのかもしれません。このカラーリングが好みの方もいるでしょう。フォローには聞こえないと思いますが、背負ってるときは目に入らないし、見慣れもしました。
まとめ:ポケットの大きさは気に食わないけどフィット感はサイコーのファストハイクパック
マジでショルダーストラップのポケット、お前はダメだ。この点だけはマジでブチギレポイントなので、厳しく指摘させていただきたい。堅実な製品づくりをしているBlack Diamondと、正規代理店のロストアローに(個人的に)愛着と信頼を持っているからこその指摘と思ってほしい。
色については些末な問題なので、それ以外で言えば、とくに背負心地にこだわった設計とサイズ展開については、文句のつけようがありません。細部までよく作り込まれていて、その機能を考えればコスパも良いと思います。
GREGORY「Z40」の後継ということで、「パーシュート30」を選びましたが、「トレランバックパックでは容量に不安を感じるけど、30リットルも要らない」という方には「パーシュート15」という選択肢もあります。
個人的には、わりと荷物が多くなりがちなタイプだと思うのですが、それでも「パーシュート30」の容量は日帰り登山には十分で、容量で困ったことはありません。テント泊はさすがに厳しそうですが、カリッカリに荷物を削ったテント泊にチャレンジしてみても良いかもなぁとも思います。
ファストハイク向けのバックパックは色んなメーカーからさまざま出ていて、面白いカテゴリでもあると思うのですが、サイコーのフィット感、十分な機能と容量から、最初のファストパックとしてもオススメできるバックパックだと思います。
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