「王道のアルコールストーブ」と言えば、自分の中では、やはりTrangia「アルコールバーナー TR-B25」ということになります。そもそもTrangiaがアルコールストーブメーカーとしては老舗だし、「ストームクッカー」など、TR-B25が使えるオプション製品も豊富。
しかし、よく持ち歩き、よく使うアルコールストーブとなると、どうしても日本が誇るEVERNEWの「Tiアルコールストーブ EBY254」になってしまいます。
「Tiアルコールストーブ」の特徴
重量
「Tiアルコールストーブ」を「Tiアルコールストーブ」たらしめているその重量は、実測で35.6グラム(カタログスペックは34グラム)。
Trangiaの「アルコールバーナー」は110グラムなので、その3分の1以下という計算です。
もっと軽いアルコールストーブはほかにもたくさんあるのですが、十二分に軽量と言っていいと思います。
デザイン
意外にも(?)、全体的なサイズ感や雰囲気は、オーセンティックなTrangia「アルコールバーナー」にわりと似ています。
アルコールストーブは、真ん中の大きな穴(トップホール)を除けば、周りの縁に打たれた小さな穴(ジェット孔)から炎が吹き上がる構造です。
Trangia「アルコールバーナー」は上段に小さなジェット孔が24個。対して、EVERNEWの「Tiアルコールストーブ」は上段に8つのジェット孔と、下段に16個のジェット孔があり、それぞれがTrangia「アルコールバーナー」のジェット孔よりも大きな穴になっています。
これにより、Trangiaよりも強い火力を実現しています。
目盛り
内側には目盛りが打たれていて、30mlと60ml、そして満タンを示す70mlの線が入っています。容量の70mlをオーバーすると、構造的に、下段のジェット孔からアルコール燃料が漏れ出てしまいます。
「使い切り」が基本のアルコールストーブなので、この目盛りを参考にしてアルコール燃料を入れています。
例えば、お茶を飲むときの180mlの水を沸かすなら、10mlでピッタリ、余裕を持って15ml。カップ麺のお湯を沸かすなら(屋外なら)30ml入れると思います。自動炊飯シリンダーを使って1合炊飯するなら30mlよりも少ないくらいでOK。
チタン製
その軽さの秘密は素材であるチタンの比重にあります。アルミよりは重いけども、真鍮やステンレスよりは軽く、そして強度もあります。
そしてチタン製であるがゆえの、加熱による青い変色。チタンブルー。
この変色により、世界にひとつの一点ものという感覚が強まって愛着が湧きますし、使って育てる楽しみもあります。
「Tiアルコールストーブ」の良いところ
軽量でバランスの良い使いやすさ
「Tiアルコールストーブ」は上にも記載したように軽量で、かつ、サイズ感やデザインがキングオブアルコールストーブであるTrangia「アルコールバーナー TR-B25」と似ているため、非常にバランスの良い使いやすさを実現していると思います。
例えば、同EVERNEWの「BLUENOTEstove」は13グラムと「Tiアルコールストーブ」よりも軽量ですが、15mlしか入らないため、場合によっては燃料の継ぎ足しが必要です。完全に消火してからじゃないと燃料を追加できないアルコールストーブにとって、この小ささは事故の元になり得ます。またその小ささから、アルコールストーブを倒してしまう事故も多いと思われます。
「BLUENOTEstove」をディスる意図はぜんぜんなくて、これらを十分理解して使いこなせる玄人向けのアルコールストーブだと思っています。
「Tiアルコールストーブ」はTrangiaの「アルコールバーナー」の3分の1という軽さという軽さで、荷物の邪魔にもならず、それでいて、王道たる「アルコールバーナー」と同じサイズ感で十分な容量を持っています。
二段式のジェット孔
EVERNEW「Tiアルコールストーブ」にあって、Trangia「アルコールバーナー」にないもの。それは上下段に分かれたジェット孔です。
おそらくは高火力を実現するための設計だと思いますが、上下段に分かれていることにより、アルコールストーブに直接クッカーを乗せても、炎が消えません。
本燃焼が始まってからクッカーを乗せないと火が消えてしまうし、径が小さくてクッカーが不安定なため、アルコールストーブ初心者にはオススメできません。
が、この使用法の場合、とくにU.L.(ウルトラライト)という文脈においては、ゴトクが不要というのは大きなメリットになり得ます。
中央のトップホールと上段のジェット孔からの炎が塞がれ、また下段のジェット孔からクッカーの底までの距離も短すぎるため、火力が弱いという欠点もありますが、湯沸かしの時間が十分に取れるときや、じっくり加熱したい炊飯のときなどには試してみたい使い方となります。
オプションが豊富
これはEVERNEWの販売戦略なのかもしれませんが、オプションが豊富です。
風防兼ゴトクの「アルコールストーブスタンド」と組み合わせて使うこともできるし、ゴトクだけでも「ALストーブ用十字ゴトク」、「チタンゴトクTriveTi」、「T0.3 triveTi」の3種類がラインナップ。
EVERNEWのオプションが豊富なおかげで、そしてここまで何度か述べてきたようにTrangia「アルコールバーナー」と似たサイズ感のおかげで、TrangiaでもEVERNEWのオプションが使用できることがあります。
例えばゴトクは完璧にフィットします。Trangiaにはチタン製の軽量なゴトクがないので、これは嬉しい。
EVERNEW「アルコールストーブスタンド」に、Trangia「アルコールバーナー」を乗せることはできます。が、収納はできないので、この組み合わせはイマイチかもしれません。
「Tiアルコールストーブ」のイマイチなところ
火力調整・消火蓋がない
これは設計思想に関わる部分だと思うので仕方がないところでもあるですが、Trangia「アルコールバーナー」のように「火力調整・消火蓋」が付属しません。EVERNEWからはオプションとしても販売されてません。
消火蓋が必要な場合、Gaobabuの「ハンドル付消火蓋」が使えます。もちろん、サイズが近いTrangia「アルコールバーナー」の消火蓋を使うこともできます。
もし、消火蓋を持っておらず、かつ途中で消火しなければいけない事態に陥った場合は、クッカーなどを被せて酸欠にさせることにより、消火することができます。
絶妙にTrangia「アルコールバーナー」とは違うサイズ
ここまでTrangia「アルコールバーナー」に「似たサイズ」と書いては来たのですが、絶妙にサイズが違うため、完全な互換はありません。
そのため、例えばTrangiaの「ストームクッカー」に「Tiアルコールストーブ」を乗せると、本当にピッタリすぎて、乗るというよりは引っかかっている感じ。
振動を与えると「Tiアルコールストーブ」が傾いて、事故になりそうなので、「ストームクッカー」では使えないかなーと思っています。
また、逆にTrangia「アルコールバーナー」をEVERNEW「アルコールストーブスタンド」に乗せる場合も、サイズが微妙に違う故に、乗るんだけど収納はできません。
まとめ:ほぼ完璧なもうひとつの王道アルコールストーブ
やはり、最初に買うアルコールストーブには、王道たるTrangia「アルコールバーナー」を推したいのですが、軽量性を求める場合や、国産のギアが好きだという方には、EVERNEW「Tiアルコールストーブ」が推せます。
軽く、デザイン性に優れ、ゴトクがなくても使用でき、オプションも豊富。チタンブルーを育てるという趣味性もイイ。
重箱の隅をつつくようなイマイチなポイントも挙げてはみたけれど、ほぼ欠点がないアルコールストーブと言って良いと思います。
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