これまでのあらすじ
「ガス缶のゴミが大量に出るのがイヤだ」という半ば強引なモチベーションで、禁断のガソリンストーブに手を出してしまったワタクシ。
イマドキのマルチフューエル・ストーブだと迷ってしまうという謎の理由で、謎にレトロなストーブOPTIMUSの「SVEA 123R」を購入。
金色の小さな悪魔と契約を交わし、すっかりその魅力に取り憑かれ、
今度は販売終了しているOPIMUSの箱ストーブをいきなり2つも入手してしまうという暴挙に出ます。
こいつ、狂ってやがる。
SVEA 123RとOPTIMUS 8R、PRIMUS 8Rを愛でる日々が続いているわけですが、ここでひとつの疑問が心を占め始めます。
あれ? 燃料高くね?
そうなんですよ。
これらのガソリンストーブは、いちおうホワイトガソリンしか使えないことになっていて、そのホワイトガソリンは、1Lでなんと1,000円以上する超高級品。
とは言え、体感的にはOD缶の方がコスパ悪そうで、調べた感じだと(燃焼時間の比較で)倍くらいOD缶の方が高そうでしたけど。
レトロで非加圧式のOPTIMUSのガソリンストーブで、その仕組みを理解したいま、
次のステージへ進んでイイんじゃないか!?
安価な燃料
ホワイトガソリンよりももっと安い化石燃料として、まず思いつくのが(クルマで使う)レギュラーガソリン、ハイオクガソリン。そしてレギュラーガソリンよりも安い軽油。さらに軽油より安く、雪国の人間には暖房用の燃料として圧倒的に馴染みがある灯油。
灯油は1Lあたり100円程度と、ホワイトガソリンの10分の1という圧倒的なコスパに加え、揮発性の高いガソリンよりも扱いがカンタン(ポリタンクでの購入・保管が可能)というメリットもあり、まずは使用したい燃料となります。
となると、ガソリン系と灯油系が使用できるマルチフューエル・ガソリンストーブということになるわけで、一般的にいま日本で入手できる分離式・加圧式のストーブを雑に分類するとこんな感じ。
ガソリンストーブ | 使用可能燃料 |
---|---|
OPTIMUS「NOVA」 MSR「ドラゴンフライ」 MSR「XGK EX」 | ホワイトガソリン・無鉛ガソリン(ハイオク含む)・灯油・軽油・ジェット燃料 |
MSR「ウィスパーライトインターナショナル」 | ホワイトガソリン・無鉛ガソリン(ハイオク含む)・灯油 |
SOTO「ストームブレイカー」 | ガス(SOTO OD缶)・ホワイトガソリン・レギュラーガソリン |
SOTO「MUKAストーブ」 | ホワイトガソリン・レギュラーガソリン |
MSR「ウィスパーライト」 | ホワイトガソリン |
ガソリンと灯油が使用できるのはOPTIMUS NOVAと、MSRのウィスパーライトインターナショナル以上、ということになります。
そして、ここまで一貫してOPTIMUSのストーブを買ってきたワタクシ、当然OPTIMUS NOVAを買うと思いますよね?
正しい。その直感は正しい。
そして、得てして直感とは外れるものです。
MSR「ウィスパーライトインターナショナル」を買いました。
なぜ「ウィスパーライトインターナショナル」なのか?
それはワタクシが天邪鬼だからです。
というだけではなく、自分でもアタマオカシイと思うのですが、
- どーせ放っておいてもそのうちOPTIMUS「NOVA」欲しくなるんだろ? だったら先にMSR買っちゃえば? という物欲野郎の独特な思考回路
- OPTIMUSよりもMSRの方が付き合い長いんですよ(知ってるのはスノーシューだけだけど)
- おそらくこのカテゴリではMSR「ウィスパーライトインターナショナル」の方がOPTIMUS「NOVA」より定番
- 「ウィスパーライトインターナショナル」の名が示す「静か」で「軽い」を体験したい
あたりが「ウィスパーライトインターナショナル」を選んだ理由だと思います。正直なところ、自分でも理由をうまく言語化できてません。
ちなみに、「ウィスパーライト」を選ばなかった理由はマルチフューエルじゃないからで、SOTOを選ばなかったのは灯油が使えないから。MSR「ドラゴンフライ」「XGK EX」を選ばなかった理由は、そのカテゴリならOPTIMUS「NOVA」が欲しいからです。
こう考えると「ウィスパーライトインターナショナル」を選んだのは必然とも言えます。
MSR「ウィスパーライトインターナショナル」
パッケージ
わりと頑丈そうな外箱に入ってました。赤いパッケージがカッコいい。
OPTIMUSの燃料ボトルも使えそうでしたが、いちおうMSRの燃料ボトルも購入。いちばん小さいやつです。
収納袋付き。
内容物は以下のとおりで、
下段の左から
- リペアキット
- 「ウィスパーライトインターナショナル」本体
- 風防
- マニュアル(2冊)
となっています。
収納
初期状態ではこのようにまとめられています。
若干分かりづらいですが、フューエルポンプをロックするためのキャッチアーム(真ん中の針金)をポンプに引っ掛けて、勝手に展開しないように収納されてました。
このコチっとしたまとまり感がイカしてます。
重さ
ストーブとフューエルポンプを合わせた重さは実測で310.6グラム。これ以外に、燃料ボトルと燃料が必要になります。
樹脂製のフューエルポンプがこの軽さに寄与していると思われます。
初火入れ
道具は使ってナンボ。いつまでも造形の美しさを愛でているわけにもいきません。
この焼きが入っていないきれいなストーブの状態も見納め。
なぜか今回購入したMSRの燃料ボトルではなく、ホワイトガソリンが入っていたOPTIMUSの燃料ボトルにフューエルポンプを接続。コントロールバルブが閉まっていることを確認後、30回ほどポンピングします。
次にストーブのゴトクを展開して、フューエルラインの先端をポンプに接続します。
ここでふーんと思ったのは、ポンピング(加圧)してからフューエルラインをポンプに接続する、というところ。燃焼後、火力を調整するためにポンピングすることはあると思いますが、最初は燃料ボトルとポンプだけの状態でポンピングすれば良く、ややこしい姿勢にならなくて済みます。コントロールバルブが閉まっている確認だけはしっかりした方が良さそうですが。
次にコントロールバルブを3/4回転をど開、プライミングカップ半分くらいの燃料(今回はホワイトガソリン)を出し、プライミングカップの燃料に火をつけて、プレヒートを行います。
これまで行ってきたアルコール燃料によるプレヒートに比べて、ガソリン燃料によるプレヒートは炎も大きく、煤もたくさん付くという事前知識を得ていたのですが、
その通りでした。
これはちょっと…屋内でのガソリン燃料によるプレヒートは厳しい。まぁ、そもそも屋内での使用は禁止事項だと思いますけど。
プレヒートの炎が弱くなったところで、再びコントロールバルブをゆっくりと開き、本燃焼へ移行。実際は、プレヒートの炎が失火しちゃったので、ライターで火を点けました。
そして…
何なのコレ、めっちゃ静か…!!
SVEA 123RやOPTIMUS 8Rの悪魔的な燃焼音に比べると、
圧倒的にジェントル。
これはまさに神の囁き、神の福音と言うべき静けさ。聞いたことないけど。
加圧式ということもあると思いますが、火力は申し分なく、「Ti Mug pot 500」の水がソッコーで沸騰しました。
なお、ストーブは一回の燃焼でこのくらい焼けました。
インプレッション
分離式のメリット
実は、MSR「ウィスパーライトインターナショナル」が人生初の「分離式」ストーブ。
一体型に比べると、当然ゴトクの高さが低くなり、ヒジョーに安定します。
アウトドアでこの安定感はとても重宝しそうです。
ゴトクと一体型の3本足は、雪上で使用するときなどに、すぐに沈んで使い物にならなくなりそうですが、同梱されているアルミ板を下に敷けば解決すると思います。
おそらく熱反射すると思うので、雪上でなくても、このアルミ板を下に敷くことにより、効率よくクッカーに熱を伝えられるかと。
また、「トリリウムストームベース」という製品もあります。
イマイチなポイント
いちおう、気になった点も書いておきます。
ゴトクが広すぎる
これは完全に予想外だったのですが、ゴトクが広すぎてEVERNEW「Ti Mug pot 500」だとゴトクの上に乗ってくれません。乗っているように見えるかもしれませんが、実はジェネレーターの上に乗っています。
これはさすがに危なすぎるので、ゴトクを拡張してくれるようなこういう(↓)パーツを導入しようかと思ってます。
(追記)
買いました。
プレヒート燃料
今回、プレヒートの燃料に本燃焼と同じ燃料(つまりガソリン燃料)を使ったのですが、プレヒートの炎が(アルコール燃料と比べて)かなり大きくなるので、使用時の場所を選ぶなぁという印象。少なくとも、テント内では厳しい(もともとテント内での使用は禁止されてると思います)。
また、プレヒート時にカップの裏に煤が付き、本燃焼に入ってその煤が剥がれて空中を舞ったのもちょっとダルい。これはガソリン燃料特有の現象で、灯油を使用した場合は発生しないのかもしれません。もう少し実験したいところ。
どちらにせよ、キレイに、より安全に使うのであれば、プレヒートにアルコール燃料を使うのはアリかなぁと思いました。少なくともアルコール燃料なら煤は付きづらく、使用後の手間が少し減りそうです。また、アルコール燃料によるプレヒートなら、いちおう屋内でも使用可能でした(自己責任でお願いします)。
ただし、SVEA 123RやOPTIMUS 8Rでも、燃料タンクからスポイトなどを使用してガソリン燃料を少量抜き取り、それをプレヒートに使用するという運用をしている人もたくさんいます。プレヒートに本燃焼と同じ燃料を使うというのは王道だし、「プレヒート用にアルコール燃料を別途持ち歩く」というのも、まあまあ馬鹿らしい。この辺、もうちょっと考えていきたいところです。
ポンピングのひと手間
これまで、非加圧式の、つまりポンピング不要のガソリンストーブを使用してきたので「ポンピング」というひと手間が増えたのが、意外に面倒に感じました。
初めてガソリンストーブを使用したとき、プレヒートという儀式が増えたのですが、これはぜんぜん面倒じゃなかったんですよ。なのに、ポンピングという儀式はダルい。
でもまあ、この辺も、ガス圧の調整に慣れてくると、何も感じなくなるのかもしれません。
今回は、初めて加圧式ガソリンストーブを使用したことにより、非加圧式の安楽さが際立つ結果になったという感じです。
まとめ:燃焼音はジェントルな分離式マルチフューエルバーナー
ワタクシの分離式、加圧式ストーブへの慣れてなさからイマイチなポイントがちょっと多めに見えますが、とは言えさすがはMSR謹製のガソリンストーブ。
デザインも工業製品的に格好良く、まさに機能美と言った印象で、おそらくは軽量化を意識してフューエルポンプを樹脂製にするなど、革新性も忘れてません。
燃焼音は非常に静かで、まさに「ウィスパー」。早朝のテント場・キャンプ場でもそこまで神経質にならずに使えそうです。
細かい話になりますが、実は出荷時に設定してあるガソリン用のジェットとは別に、灯油用のジェットが同梱されています。つまり、ガソリンと灯油にそれぞれ最適な空燃比のジェットを用意しているということであり、燃焼効率に対するこだわりが見て取れます。この辺りはひとつのジェットでガソリンと灯油をまかなうOPTIMUSとは異なる設計思想ということでしょう。
まずは、もともとの目的である、燃料に灯油を使用するストーブの運用。これを試していきたいところです。場合によっては、アウトドアにおけるエネルギー事情が一変する可能性があります。
すみません、大げさでした。
コメント